うつ病 目次

うつ病治療の3原則

  • うつ病の正しい知識をもつ
  • 正しい対応法を心がける
  • 家族は自分まで一緒に共倒れしない

うつ病とは

脳の病気とお考えください。脳も臓器ですから、一種の身体疾患として考えています。原因はさまざまですが、いわゆる遺伝子疾患ではありませんが、生まれながらの神経質さや考えすぎる傾向、まじめすぎる傾向などが関係しています。また、多すぎる残業などによる労働での疲れ、度重なる心労や苦労などが引き金になります。
脳には思考や記憶などのいろんな機能がありますが、「気分」や「感情」という脳の機能の病気です。
誰でもかかりうる病気で、日本人の2%が罹患しています。

共通の精神症状(診断基準参照)があり、体にも症状がでます。
空しい・悲しい・辛い・憂うつ・泣ける・面白くない・笑えない・つまらないだるい・疲れた・重い・やる気ない・なにもしたくない・おっくうだといった感覚があればうつ病を疑ってください。

どのように対応したらいいか?(患者様自身や家族の対応において心がけること)

怠け病ではありません。患者様はたいてい自分を責めておられます。だから、あまり追い立ててあげてはいけません。治療を始めても、当面3-6ヶ月はなかなか治らないのが普通なので、初期は休養が必要ですし、薬もやや多めに必要です。半年もするうちには薬はどんどん減らすことができます。

うつ病の正しい知識を取り入れましょう。原因・治療法などを知れば、患者様が、これからどのように変化していくのか理解できます。どのように変化していくのか理解することで、見通しが立ち、もっといい対応法ができるようになります。

周囲の人の必要な心がけ

1.あせらないでゆっくり見守る、待つ。治そうと思わないで、治るまで待つ覚悟

躍起になって治そうとしない.まずは専門家に任せましょう。

2.励まさない、怒らない

「元気を出せ,病気に負けるな」など励ましや「飯を食え、風呂に入れ」などの世話焼きや、本人の性格・内面的なことを指摘するようなことは避け、患者様と衝突したら、お互い距離を取ってみる。

3.ゆっくり休養をとってもらう

外出や運動を無理に勧めず、とにかくゆっくり休んでもらう。家事などの生活上の負担を減らしてあげる。

4.家に長時間1人きりにはしない

5.話を聞いてあげる

* 患者様の態度、言動を過度に深刻に受け止めないでください。いずれ治る病気です。気分が傷害されている病気です。気になる内容、わからない内容は医師などに確認してください。

6.治ってないとき重要な決断をさせないでください。

病気を理解し安心感を与えるよう配慮しましょう。普通に接しましょう。信号をキャッチしましょう。

7.薬の管理

自分でできない場合は家族が管理してあげてください。
患者様やご家族が勝手に服用を止めてはいけません。
時々でいいので,家族の方は一緒に病院に受診し、状況を把握してください。

8.規則正しい生活

食生活については十分にご配慮ください。食欲、体重などはじっと見守ってください。薬は太りやすいものが多いので、食べすぎなどにご注意ください。睡眠時間、起床時間に十分ご配慮ください。昼間の眠気など、どんなときに眠くてどんなときに眠れないかよく観察ください。

9.自分を犠牲にしすぎない

患者様の負担を減らして、できるだけ休養とっていただけるよう配慮するあまり、自分自身が苦しくなってしまう場合があります。共倒れしないように、患者様を放って置いてもいい時もあります。ご自身の時間も持ってください。長期戦です。一進一退しながら徐々に治っていきます。

10.お話の仕方のこつ

時間も場所もゆとりを持ったところで話をお聞きください。プライバシーには十分配慮しましょう。つらい気持ちに共感する事が大切です。励まさないで、相手のペースで話を進め、相手がいろいろな話ができるような形で質問をしましょう。自殺しないと誓約してもらう必要もあります。

正しい知識の獲得

うつ病

* うつ病の原因遺伝子は未確定。

* 脳の機能異常であると考えられている。

* うつ病には治療原則がある。

* うつ病の方への接し方の原則がある。

 

原因:心理社会学的見地

* 状況に適応していない思考と行動の習慣があります。

* 子供時代の未解決な葛藤が姿を変えて非適応的状態を作り出しています。

* 悲観主義、無力状態があります。

* 発症に先立って、過重な労働負荷による心身の疲れ、感染症や身体慢性病、失恋・悩みなどの環境上の変化があります。

 

原因:生物学的見地

*脳内の神経伝達物質のうちモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン)の欠乏によるという説や、セロトニン受容体の感受性が亢進しているため、ストレスで急にモノアミン遊離が起こると受容体が混乱し、うつ病が発症するという説、視床下部―下垂体―副腎系が障害されているという説、生体リズム異常によるという説などがあります。

お薬を服用する理由

* たとえ、原因は心理的なものだけの場合でも・・・うつ病は脳の病気です。

* 理由は、脳内の物質が、普通のときとは量が異なっています。主には、セロトニンの活用率が減っています。十分に機能していません。ノルアドレナリンもたいてい減っています。また、諸物質がアンバランスのときもあります。足りないものを補給し、余っているものを働かないように薬を投与しなければ治りません。

うつ病のサブタイプ

* メランコリー型:2000年前から描写されている古典的、典型的、定型的なうつ病。

* 非定型うつ病:女性に多いうつ病として記述。

* 不安の強いタイプと弱いタイプ。

* 妄想のあるタイプとないタイプ。

* 現代型うつ病。

* どのうつ病も、本能的、動物的な部分が弱まった状態であることは一緒ですが、不安の強いものや弱いもの、傷つきやすいかそうじゃないかなど性格からくるもの、気分の変わりやすさからくるもの、生い立ちの複雑さからくるもの、これまでの経験量からくるもの、体の疲労からくるもの、環境から来るもの。

うつ病の治療方針

* ガイドラインに従いながら、うつ病の種類を考えて個別に対応します。
うつ病治療ガイドラインには、APA、BAP、CANMAT、NICE、TMAP、WFSBPなどの名称の、国際的なガイドラインがあります。ガイドラインとは、治療の原則のことです。

* どのガイドラインも、うつ病とは、「再発を繰り返す慢性病である」ととらえており、どのように症状を消し去るか、消し去った症状が再び現れないようにするには、どうすればいいかを考えて作られています。

うつ病治療3段階

* 症状が強い時期、初めてうつ病にかかったときを、急性期と呼びます。

急性期が過ぎて、症状が完全に取れたとき(完全寛解)、治療は継続期に入ります。継続期は、症状をまったく出さないで薬を減らしつつ、同じ治療を継続することが目的です。最終的に維持期に入り、薬物を漸減して治療を終結します。

心理療法は、急性期の後半から始めて、うつ病の方に従って個別に認知、行動、過去の整理、今後の生き方の構築などを中心に、再発予防のために行います。

気分変調症

うつ病の近縁疾患で、経過のとても長い病気です。20代前後に発祥することが多く、気をもみすぎて発症する場合が大半です。気分の変化が多いのが特徴です。

抗うつ薬療法は2-3年続けることがおおく、心理療法は行ったほうがいいことが知られています。うつ病として来院される場合が多いですが、うつ病とはっきり見分けて治療したほうがいい結果につながります。

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